(音声読み上げ用)ユニバーサルデザインまちづくりガイドライン2-1

最終更新日:2011年8月23日

1 ユニバーサルデザインの視点でのまちづくりの方向性(前半)

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1 ユニバーサルデザインの視点でのまちづくりの方向性
 社会変化に対応したまちづくりの課題と、新宿区都市マスタープランで掲げる「誰もが自由に行動できる都市空間づくり」の課題を整理し、「ユニバーサルデザイン」の考え方を取り入れる必要性を示すとともに、新宿区におけるユニバーサルデザインの視点でのまちづくりの方向性を示します
カッコ1) 社会変化に対応したまちづくりの課題
 高齢化が進むなど、社会環境は大きく変化してきています。 これらの社会変化に対応したまちづくりの課題について以下に示します。
課題1
「超高齢社会に対応したゆとりのあるまちづくりが求められています」
 新宿区においては、総人口に占める65歳以上の高齢者の割合 (高齢化率といいます。)が、平成21年10月現在で20.6%に達し、年々その割合は高まってきています。全国的に見ても、高齢化率は22.7%となり、5人に1人が高齢者という社会を迎えています。
 一般に高齢になると、ひとつひとつの動作に時間がかかるようになってきます。都市空間では高齢者や障害者にとって、移動等の際には、不便や危険な場所もあり、道路や建築物などでは、身体の不自由な方への配慮不足も見られます。
 今後さらに高齢化が進むにつれて、都市の生活者の主体として、高齢者の占める割合が高まるため、これまでの、「できるだけ早く」、や、「できるだけ効率的に」、といった機能重視のまちづくりから、「ゆっくりと移動できる」、や、「ゆったりとくつろげる」、など、ゆとりのある(「スロー」な)まちづくりが求められるようになってきています。
○グラフ 「全国、東京都、新宿区の年齢別人口割合(平成21年10月現在)」、が入っています。
(グラフの説明) 65歳以上の高齢者の割合は、全国では22.7%に、東京都は20.9%に、新宿区は20.6%になっています。(グラフの説明は終わりです。)

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課題2
「ノーマライゼーション理念が浸透し、より社会参加しやすいまちづくりが求められています」
 障害者と健常者とが、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが望ましい姿であるとするノーマライゼーション理念の浸透を背景に、福祉のまちづくりの一環として、鉄道駅や道路等のバリアフリー化が進められてきました。        
 新宿区においても、障害者計画の中で、ノーマライゼーション理念に基づいて、「あらゆる機会を通じて、物理的なバリア (障壁)のない、安全な地域社会と、こころのバリアがない豊かな地域社会を目指す」こととしています。また、平成17年4月には、「新宿区交通バリアフリー基本構想」を策定し、新宿駅および高田馬場駅を中心としたバリアフリー化を進めています。
 新宿区内の障害者は、手帳を交付しているすべての種別で、年々増加しています。また、福祉サービスの充実とともに、まちでの行動機会も増加しています。 
 このような中で、さまざまな障害に対応した移動、利用手段と情報の提供を行うことにより、ゆったりと行動できるまちの実現、が求められています。
○グラフ 「新宿区内の障害者手帳保持者数の推移(平成17年から平成21年)」、が入っています。
(グラフの説明) 新宿区障害者計画の資料によると、障害者手帳の保持者数は、平成17年から平成21年で、身体障害が9,138から9,942に、知的障害は999から1,160に、精神障害は814から1,481に年々増加しています。(グラフの説明は終わりです。)

課題3
「多様な価値観やライフスタイルを許容できるまちづくりが求められています」
 都市生活の多様化の中で、まちに対するニーズも多様化しています。また、学業、就業、子育て、老後など、各ライフステージに応じた要望もさまざまです。
 大学や専門学校、日本語学校、病院、百貨店などが多く立地する新宿区では、施設を利用する高齢者や障害者、外国人など、さまざまな人々の移動や、施設利用の利便性を向上させてサービスを享受できるようにする必要があります。
 新宿区では、外国籍の方が区民の約1割を占め、100を超えるさまざまな国籍の外国人が暮らしています。加えて、日本語学校が多数立地し、外国人留学生や日本語学校の生徒も数多く生活し、活動しています。さらに、観光立国の本格的な推進に伴い、東京都を訪れる外国人旅行者は近年、急激に増加しており、まちの中でのわかりやすい案内などの情報提供が必要です。
 また、少子化が進む新宿区では、子どもを安心して育てられる環境づくりが課題であり、子育て環境の充実を図るとともに、子どもを連れて安心して買い物ができる、移動しやすいまちの実現が求められています。
 このように、新宿区に暮らし、活動するさまざまな人々の価値観や、ライフスタイルに対応したまちづくりを展開することが求められています。
○グラフ 「新宿区内の外国人登録者の推移 (平成17年から23年)」、が入っています。
(グラフの説明) 新宿区統計によると、外国人登録者数は、平成17年の28,272から、平成23年の35,805へと増加しています。 (グラフの説明は終わりです。)

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課題4
「個性ある歴史・文化や、美しい景観を享受できるまちづくりが求められています」
 地域の個性を重視した良好な景観を形成し、次世代に継承するための持続的な取組が必要である、という考え方が広がっています。 また、地域の魅力を、できるだけ多くの人たちに知って、感じてもらうことが重要であり、個性あるまちづくりが必要になってきています。
 新宿区には、個性ある歴史や文化を求めて、多くの高齢者や障害者、外国人観光客などが訪れます。そのため、魅力ある地域に容易にアクセスでき、すごしやすくすることで、さまざまな人々が新宿区の魅力を享受できるまちづくりが求められています。
○図 「新宿区の景観計画の区域と区域区分」の図が入っています。
(図の説明) 新宿区は全域が景観計画の区域になっていますが、区分地区として、「落合の森 保全地区」、「水とみどりの神田川、みょうしょうじがわ地区」、「粋なまち 神楽坂地区」、「歴史あるおもむき 外ぼり地区」、「新宿御苑みどりと眺望保全地区」、「エンターテイメントシティ 歌舞伎町地区」の6地区があり、その他の地区は一般地区となっています。 (図の説明は終わりです。)

課題5
「環境負荷の少ないまちづくりが求められています」
 地球温暖化やヒートアイランド現象などの環境問題が深刻化するなか、地球環境に負荷の少ない、持続可能な都市と環境を創ることが課題となっており、これまでの車中心の都市構造から、車に過度に依存しない、人間中心の都市への転換が必要とされています。
 新宿区には49もの鉄道駅があり、鉄道路線網が充実しています。この特徴を活かして、さらに公共交通の利便性を高める取組などを行い、マイカー等から公共交通への利用転換を推進することで、さまざまな人々の移動の負担を軽減するとともに、環境負荷の少ない、環境共生型のまちづくりを進めることが求められています。
 また、新宿区は、台地と東西に伸びる低地、区の外周を取り囲む神田川、みょうしょうじ川、外ぼりの水面、明治神宮外苑、落合斜面緑地のみどりなど、変化に富んだ地形と自然環境を有しており、これらを活かした環境にやさしいまちづくりを進めていくことも求められます。
○図 「新宿区のみどりの配置方針図」が入っています。
(図の説明) 新宿区内に、7つの森、水とみどりの環、風のみち、みどりの軸重点路線などを配置し、さらに、樹林地保護強化地域、みどりの保全地区候補地域、みどりの推進モデル地区候補地域、屋上緑化等推進モデル候補地域を指定して、みどり豊かな新宿区を目指しています。(図の説明は終わりです。)

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課題6
「災害や犯罪に強い「安全・安心」なまちづくりが求められています」
 東京でマグニチュード7クラスの首都直下地震が、30年以内に起こる可能性は70%以上といわれています。また、地球温暖化の影響もあり、局地的な豪雨などの異常気象のリスクも高まっている、と考えられます。
 新宿区では、新宿駅周辺を中心として多くの人が集まります。そのため、被災時の対応が大きな課題となっています。
 新宿区のちゅうかん人口は、23区内で3番目の、約77万人と、多くの通勤・通学者が集まっており、災害時には、約35万人の帰宅困難者が発生することが予想されます。住宅地に目を向けると密集市街地もあり、ここでも、地震や火災に対する問題も抱えています。
 犯罪発生件数 (刑法犯認知件数) は全国的に減少傾向にあるものの、人々の犯罪に対する不安感は高く、より安心感のあるまちづくりが必要とされています。また、区内の駅周辺や住宅地などでは、都心特有の犯罪が発生する可能性もあります。
 今後、新宿区のさまざまな利用者や居住者にとって、災害や犯罪等からいかに安全を確保していくか、が課題となっており、ハード面の対策として都市(居住)空間の整備、ソフト面の対策として自主的な活動などによる、安全・安心なまちづくりが求められています。
 また、社会環境の変化に伴い、今後さらに進む高齢化や、さまざまな主体の社会参加への対応、そして、深刻化する環境問題に対応した、持続可能な都市の形成など、新宿区の未来を見据えたまちづくりが必要となります。また、新宿区のさまざまな利用者や居住者の日常の暮らしや活動だけでなく、新宿区の個性を活かした観光や地域の防災力、防犯力の向上などへの対応も求められています。
○グラフ 「新宿区のちゅうかん人口・夜間人口の推移」のグラフが入っています。
(グラフの説明) ちゅうかん人口は、平成2年の817,000人から徐々に減少して、平成17年には770,000人になっています。夜間人口は、平成2年の291,000人から一時は減少しましたが、平成17年には304,000人に増えています。ちゅう夜間人口の比率は、平成17年では、ちゅうかん人口が夜間人口の2.53倍となっています。 (グラフの説明は終わりです。)

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カッコ2) 「誰もが自由に行動できる都市空間づくり」の課題
 新宿区では、新宿区都市マスタープランにおいて、「暮らしと賑わいの交流創造都市」を目標に掲げ、「誰もが自由に行動できる都市空間づくり」 の推進を位置づけています。「誰もが自由に行動できる都市空間づくり」を進めるためには、通勤・通学者や買い物客をはじめ、高齢者や障害者、子ども連れの人、外国人観光客など、さまざまな人々のニーズに対応した都市空間づくりが必要であり、現在の新宿区の都市空間には次のような課題があります。

課題1
「バリアがなく 「自由に」行動できる都市構造が求められています」
 日本一の乗降客数である新宿駅周辺の都市空間は、何層にもはりめぐらされた地下街から、地上の道路、ペデストリアンデッキ、高層のビル群などが、立体的かつ複雑に広がっており、バリアフリー化が十分ではなかったリ、上下移動が多くわかりにくい、という問題を抱えています。 初めて訪れる人や、高齢者、障害者にとって、やさしい都市空間とは言い難い状況であり、さまざまな人々が自由に移動できる環境の整備が必要です。
○図 「新宿駅周辺歩行者専用道 (地下道・ペデストリアンデッキ)のネットワーク」の図が入っています。
(図の説明) 新宿駅周辺の歩行者専用道として、地下道とペデストリアンデッキのネットワーク化が計画され、現在整備が進んでいます。 (図の説明は終わりです。)

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課題2
「ゆとりある 「快適な」歩行空間の確保が求められています」
 新宿区の都市空間は、人が多いにもかかわらず、駅周辺や道路において、十分な待ち合わせの空間や歩行空間が確保されておらず、「ゆとり」の少ない状況にあります。また、自転車や自動二輪車の駐輪、駐車車両、客待ちのタクシーなどが道路空間を占有しており、駅前広場の確保や道路の多様な活用などにより、歩行者優先の考え方にシフトしていくことが必要です。
○写真1 「西武新宿駅駅前広場の現状」が写っています。
(写真の説明) 駅前広場のスペースの多くが自転車整理区画や喫煙スペースに占められ.歩行者のための空間が確保されていません。
○写真2 「新宿通りでの歩行者天国、モア4番街のオープンカフェ開催時の風景」が写っています。
(写真の説明) 道路を利用した社会実験として、歩行者天国やオープンカフェを開催することで、歩行者優先のまちの実現を目指しています。 (写真の説明は終わりです。)

課題3
「安心して」活動できる都市環境の充実が求められています。
 車いす使用者やオストメイト、子ども連れの人などは、トイレの有無が外出時の行動に大きな影響を与えます。新宿区内の多くの施設にはすでに多機能なトイレが設置されていますが、使うことのできるトイレの情報が不足しているため、有効な利用がされていません。
 これらのトイレは、既にストックとしてある大事な資源ですので、これらを有効に活用できる仕組みが必要です。
 十分な歩道や道路幅が確保されていない住宅街などでは、交通安全や防災・ 防犯の観点から、歩行者の安全性の確保と安心感を向上させることが必要です。
 また、立体的に広がる複雑な都市構造であることが、特に移動に制約のある方や、はじめて訪れた方の災害時の避難において大きな障壁となることが予想されます。 さらに、超高層ビル街や地下街では、数少ない避難経路に多くの人が集中し、パニックが起こる可能性等が指摘されています。さまざまな人々が新宿区を訪れることに不安をもたないようにすることが必要です。
○図 「オストメイト対応トイレの例」 の図が入っています。
(図の説明) 人口肛門や人口膀胱としたオストメイトは国内に約20万人から30万人と推定され、オストメイトにとって、利用できるトイレの有無は外出時の行動に大きな制約となっています。オストメイトが利用できるトイレとするためには、汚物流しと温水洗浄装置またはパウチ、しびん洗浄水洗付き便器等のほか、荷物置き場等を併設し、トイレ入口にはオストメイト用設備を備えていることがわかるように表示する必要があります。(図の説明は終わりです。)
○写真1 「地下街」の風景が写っています。
(写真の説明) 地下街は非常口や地上への出口の位置がわかりづらく、災害時の案内や誘導が重要です。民間と行政の協働による避難誘導の仕組みをつくる必要があります
○写真2 「歩道と車道の区別のない道路」が写っています。
(写真の説明) 道路幅が狭く歩道の設置ができない道路では、歩道と車道の仕上げを変えるなど、視覚的に、歩行者と車両の通行帯を分離して、安全性向上に配慮をする必要があります。 (写真の説明は終わりです。)

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課題4
「地域の魅力を「楽しめる」まちづくりが求められています。」
 入り組んだ趣のある路地空間が特徴的な神楽坂では、魅力的な歴史や文化を感じさせるまち並み等があり、多くの観光客が訪れています。一方で、身体が不自由な人にとっては、階段や店舗等の入口に段差があったり、舗装表面に凸凹があるなど、魅力である反面、移動しにくいという状況もあります。
 また、新宿駅周辺には、買い物に便利な百貨店が集中しているだけでなく、文化・芸術スポットと飲食店等が混在する歌舞伎町、狭小ながら雰囲気のある店舗が並ぶゴールデン街など、多様な性格をもったエリアがあります。
 このように新宿区の個性的な地域等では、だれもが地域の魅力を享受できるように、歩きやすい道路で、さまざまな建築物への出入りのしやすさを確保し、高齢者や障害者、外国人などさまざまな人々が安心して買い物や観光ができるように配慮することが必要です。また、景観とバリアフリーの視点からバランスのとれた環境を整えていくことも必要です。
○写真1 「神楽坂の石畳の路地と沿道の和風の塀と建物」が写っています。
(写真の説明) 石畳の路地や坂などの地区の魅力を楽しんでもらうため、道路から建築物へのアクセスのしやすさや人的サポートなどの配慮をする必要があります。
○写真2 「歌舞伎町一番街の夜」の風景が写っています。
(写真の説明) 多くの来街者でにぎわう繁華街では、さまざまな人々が安心して訪れることができるようなさまざまな配慮が必要です。 (写真の説明は終わりです。)

課題5
「移動や利用を助ける 「わかりやすい」案内や誘導が求められています。」
 新宿区にはさまざまな人々が訪れます。そのため、まちの中での案内・ 誘導などの適切な情報提供が重要です。また、人の多く集まる繁華街や地下街などでは、災害時の避難誘導も考慮することが重要です。
 視覚や聴覚が不自由な人への情報提供や、外国人に対する情報提供も十分とはいえません。また、案内・ 誘導の情報があっても、落書きや不統一な案内でわかりにくい場合もあります。
 都市空間の移動や利用を、しやすくするわかりやすい情報提供のために、民間の店舗の看板や、地下街の誘導サイン、公共の案内標識などで連続的に案内や誘導をすることが必要です。
○写真1 「地下街の案内サイン」が写っています。
(写真の説明) 地下街は見通しがつきにくく、目印となるものなどが少ないため、目的地等への連続的でわかりやすい案内や誘導のためのサインが必要です。
○写真2 「きれいでわかりやすい案内板」が写っています。
(写真の説明) 落書きなどがされないような材質や統一されたサイン表示した案内板とすることで、わかりやすい情報提供ができます。案内板は適切な維持管理が必要です。 (写真の説明は終わりです。)

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 さまざまな人々が利用する駅周辺では、立体的な都市構造や、店舗、観光施設などの地域の魅力への、連続的なアクセスを考慮した、バリアのない環境整備が必要です。また、歩行者優先のゆとりのある歩行空間の確保やトイレの利用、災害時への対応など、安心して活動できる都市環境の充実、そして、わかりやすい案内や誘導などにより、だれもが移動しやすく、利用しやすく、そしてわかりやすい都市空間づくりを進めていく必要があります。
 また、新宿区の過半を占める住宅地では、交通安全や防災・ 防犯の観点から、安全な歩行空間の確保や防災性、防犯性の高い環境づくりなど、さまざまな生活者に対する安全性を確保し安心感を高めていく必要があります。

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かっこ3) ユニバーサルデザインの視点での都市空間づくりの必要性
 ユニバーサルデザインの考え方は、先に挙げた多様な課題に対する基本的な姿勢や解決の考え方を包含しています。新宿区の多様な課題を踏まえて、新宿区におけるユニバーサルデザインの視点からの都市空間づくりの必要性を示します。
丸1 バリアフリーとユニバーサルデザインの動き
 近年は、ノーマライゼーション理念の高まりを受け、福祉のまちづくり条例や施設整備に係る基準が制定される等、「福祉のまちづくり」が全国的に広まりました。
 平成12年には 「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律 (交通バリアフリー法といいます) の制定や 「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律 (ハートビル法といいます) の改正により、一定規模の施設にバリアフリー化が義務づけられ、バリアフリー化が強力に推進されることになりました。
 新宿区においては、昭和59年4月に 「新宿区身体障害者・高齢者等の利用を配慮した建築物整備要綱・ 指針」を制定し、利用しやすい建築物の整備および改善を進めてきました。また、平成17年4月には交通バリアフリー法に基づく 「新宿区交通バリアフリー基本構想」を策定し、駅周辺のバリアフリー化を進めてきました。
 これらのバリアフリーへの取組は、段差を改修するなどの物理的なバリアを取り除くだけでなく、心理面、情報面でのバリアも含めて取り除くことにより、円滑な移動空間の確保を促進してきました。
 さらに、近年は 「より便利に」、「より使いやすく」といった視点が重視され、建築や製品のデザインの中で考えられてきた「ユニバーサルデザイン」という考え方が、注目されるようになりました。
 国土交通省では、ユニバーサルデザイン政策大綱を策定し、ユニバーサルデザインの考え方に基づいた社会環境を実現するための基本的な考え方や施策を示しました。
 このように、都市空間づくりをはじめ、さまざまな施策においてユニバーサルデザインの取組が進められています。
○図 「ユニバーサルデザインに関する主な法律制定等の経過」が入っています。
(図の説明) 昭和56年の国際障害者年を契機として、ノーマライゼーション理念が高まり、平成6年にはハートビル法が制定されました。この法律に関連するものとして、新宿区では昭和59年に新宿区身体障害者・高齢者等の利用を配慮した建築物整備要綱・ 指針が制定されています。 また、東京都福祉のまちづくり整備指針が昭和63年に、 東京都福祉のまちづくり条例は平成7年に、 福祉のまちづくり条例施設整備マニュアルは平成8年に制定されました。これらにより、福祉のまちづくりが広まり、平成12年に交通バリアフリー法が制定され、平成15年にはハートビル法が改正されました。さらに平成17年には新宿区交通バリアフリー基本構想が策定され、バリアフリー化が強力に推進されることになりました。その後、平成17年にユニバーサルデザイン大綱が、 平成18年には交通バリアフリー法とハートビル法が一体となった バリアフリー新法が制定されました。東京都では、平成18年に東京都福祉のまちづくりを進めるためのユニバーサルデザインガイドラインが策定され、ユニバーサルデザインへの取り組みが展開されています。 (図の説明は終わりです。)

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丸2 ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた都市空間づくり
 ユニバーサルデザインは、利用者本位、人間本位の考え方に立ち、「はじめからできるだけ多くの人が利用可能」なことを目指すものと考えられます。
 例えば、今では多くの人が当たり前に利用しているSUICAや PASMOなどの ICカードは、ユニバーサルデザインの典型的な例と言えます。ICカードの導入により、自分で切符を買うことが困難だった視覚障害者や、手先が不自由で改札機をうまく利用できなかった人も、よりスムースに駅を利用できるようになりました。また、自動販売機を利用したり、携帯電話と連動して、さまざまな情報を手に入れることができるなど、多様なニーズに応える機能を持っています。
 ユニバーサルデザインの大きな特徴は、さまざまな人々の利用に配慮して、より広範な利用ニーズへ対応するために、利用者の視点を重視した、多様な側面から誰もが利用できるようにするためのつくり方を考えるといった 「多様さへの対応」にあるといえます。
 このようにユニバーサルデザインの考え方は、多くのさまざまな人々が訪れる都市空間においても必要なものです。新宿区においても、さまざまな人々が多様な活動を展開しており、このユニバーサルデザインの考え方を都市空間づくりに取り入れ、移動しやすく、利用しやすく、わかりやすいまちの実現を目指した、より良い取組を進めていくことが求められます。
 先に示した、社会変化に対応したまちづくりの課題や、新宿区の都市空間づくりの課題について、利用者本位、人間本位の考え方に基づき、多様な観点から課題解決を目指すユニバーサルデザインの視点をもって、まちの改善を進めていくことが必要です。

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バリアフリー及びユニバーサルデザインに関わる動き
○(図表) 国や東京都、新宿区での取組を紹介した図表が入っています。
(図表の説明)
その1 (国の取組) ユニバーサルデザイン政策大綱 (平成17年7月/国土交通省制定)
 「どこでも、誰でも、自由に、使いやすく」という、ユニバーサルデザインの考え方に基づいた社会環境を実現するための5つの基本的な考え方と10の施策を示している。
 ハートビル法、交通バリアフリー法などが、施設のハード面でのバリアフリー化が主であったこと、 多様な利用者を対象としていなかったこと、などの課題を踏まえ、これをユニバーサルデザインの観点で見直し、ソフト面も含めた総合的な取組を推進することとしている。
その2 (法律) 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律 (バリアフリー新法といいます。) (平成18年12月)
 「ユニバーサルデザイン政策大綱」の施策の一つである「一体的・総合的なバリアフリーの推進」に基づき、ハートビル法と交通バリアフリー法を統合・拡充し制定された。
 対象者の 知的・ 精神障害者等、 対象施設の公園、ろがい駐車場等) 並びに基本構想制度の拡充のほか、基本構想策定時の当事者参加の促進を図るための措置、スパイラルアップの導入や心のバリアフリーの促進等のソフト施策の充実等によって、より一体的、総合的なバリアフリー施策を推進することとしている。
その3 (東京都の取組) 東京都福祉のまちづくり条例 (平成21年3月/東京都制定)
 ユニバーサルデザインの理念に立って、高齢者や障害者を含めたすべての人の平等な社会参加の実現を目指すために、従来の平成7年制定の条例を改正した。 目的の新設、定義の見直しの他、努力義務から一歩進んだ遵守義務の設定や、情報に関する規定の新設がされ、推進計画の作成が位置づけられている。
(東京都の取組) 福祉のまちづくり推進計画 (平成21年3月/東京都)
 改正された福祉のまちづくり条例に基づき、福祉のまちづくりに関する現況と課題を分析し、平成21年度からの5ヵ年について、14の戦略と112の事業を位置づけている。
その4 新宿区の取組
 新宿区では、昭和59年4月に 「新宿区身体障害者・高齢者等の利用を配慮した建築物整備要綱・ 指針」を、 また、平成5年11月には 「人にやさしい道づくり技術的標準」などを定め、高齢者や障害者等に配慮した都市空間づくりを進めてきたほか、平成17年4月には「新宿区交通バリアフリー基本構想」を策定し、駅周辺のバリアフリー化に取り組んでいる。
 新宿区交通バリアフリー基本構想 (平成17年4月策定)は、
 平成12年の交通バリアフリー法に基づく基本構想として策定された。鉄道駅の乗降客数や関連施設の分布状況を踏まえ、「新宿駅周辺地区」、「高田馬場駅周辺地区」の2地区を、重点整備地区として選定している。アンケートや当事者参加によるワークショップ等により駅および周辺の道路等の移動に関する課題を抽出し、対応策を検討している。
 交通バリアフリー特定事業計画 (平成19年3月、平成20年5月策定)は、
「新宿区交通バリアフリー基本構想」に基づき、重点整備地区内の旅客施設や、旅客施設と公共施設を結ぶ主要な経路において、バリアフリー化に向けた改善のための特定事業計画を策定している。高田馬場駅周辺地区は平成19年3月、新宿駅周辺地区は平成20年3月に策定した。
(図表の説明は終わりです。)

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関連する基準等
 都市空間の整備にあたっては、バリアフリー新法に関する基準やガイドラインの他、東京都の条例や指針に基づき実施することが基本となります。
(図表) バリアフリー及びユニバーサルデザインに関連する基準等の図表が入っています。
(図表の説明)
 バリアフリー新法に関する基準が、平成18年12月に次のように定められています。
○公共交通に関しては、「移動等円滑化のために必要な旅客施設又は車両等の構造及び設備に関する基準 (公共交通移動等円滑化基準)」が、また、道路に関しては、「移動等円滑化のために必要な道路の構造に関する基準 (道路移動等円滑化基準)」、および「移動等円滑化のために必要な道路の占用に関する基準」、が国土交通省の省令で定められています。
○交通安全に関しては、「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に係る信号機等に関する基準」が国家公安委員会の規則、また、ろがい駐車場に関しては、「移動等円滑化のために必要な特定路外駐車場の構造及び設備に関する基準 (路外駐車場移動等円滑化基準)」、が国土交通省の省令で定められています。
○建築物に関しては、「移動等円滑化のために必要な建築物特定施設の構造及び配置に関する基準 (建築物移動等円滑化基準)」、が国土交通省の政令で、また、「高齢者、障害者等が円滑に利用できるようにするために誘導すべき建築物特定施設の構造及び配置に関する基準 (建築物移動等円滑化誘導基準)」、が国土交通省の省令で定められています。
○都市公園に関しては、「移動等円滑化のために必要な特定公園施設の設置に関する基準 (都市公園移動等円滑化基準)、が国土交通省の省令で定められています。
 さらに、バリアフリー新法に関するガイドライン等は次のようなものがあります。
・公共交通に関しては、「公共交通機関の旅客施設に関する移動等円滑化整備ガイドライン」、「公共交通機関の車両等に関する移動等円滑化整備ガイドライン」
・道路に関しては、「道路の移動等円滑化整備ガイドライン」
・都市公園に関しては、「都市公園の移動等円滑化整備ガイドライン」
・建築物に関しては、「高齢者、障害者等の円滑な移動等に配慮した建築設計標準」
・情報提供に関しては「標準案内用図記号ガイドライン」、「地図を用いた道路案内標識ガイドブック」、「公共交通機関における外国語等による情報提供促進措置ガイドライン」があります。
 また、東京都による条例・ガイドライン等には次のようなものがあります。
・公共交通・道路・公園・建築物等に関しては、「東京都福祉のまちづくり条例」、「東京都福祉のまちづくり条例施設整備マニュアル」、「福祉のまちづくりを進めるためのユニバーサルデザインガイドライン」
・建築物に関しては、「東京都高齢者、障害者等が利用しやすい建築物の整備に関する条例 (建築物バリアフリー条例)」
・店舗に関しては「店舗等内部のユニバーサルデザイン整備ガイドライン」
・駐車場に関しては「東京都駐車場条例」、「駐車場ユニバーサルデザインガイドライン」
・情報提供に関しては「国内外旅行者のためのわかりやすい歩行者用案内サイン標準化指針」
・トイレに関しては、「生活者の視点に立ったトイレ整備の指針 とうきょうトイレ、その方向性」があります。 (図表の説明は終わりです。)

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電話 03-5273-3843 FAX 03-3209-9227