新宿区男女平等推進計画(概要)

平成13年3月策定

計画策定の背景

 男女共同参画社会基本法や東京都男女平等参画基本条例の制定など、男女平等社会の実現に向けて、男女平等施策が大きな転換期を迎えています。こうした動きを受け、新宿区も新たに男女平等推進計画を策定することとなりました。1999(平成11)年、学識経験者や区議会議員、公募区民、女性団体代表で構成する男女平等推進会議を設置し、男女平等推進計画に盛り込むべき内容について検討を依頼しました。男女平等推進会議は、区民との意見交換会などを経て2000(平成12)年10月、検討結果を区長に報告し、区は、この報告を踏まえて本計画を策定しました。

計画の基本的考え方

 男女共同参画社会の実現を目指して、区の施策の基本的な方向を明らかにし、施策の総合的な推進を図ります。本計画は、男女共同参画社会基本法に規定する「市町村の区域における男女共同参画社会の形成の促進に関する施策についての基本的な計画」として、男女共同参画の促進に関する施策を推進するための区の基本目標と施策の方向を体系化し、目標の達成に必要な事業計画を示すものであり、区が推進する施策の指針としての性格を持ちます。

計画の期間

平成13年度~平成19年度の7か年計画とし、必要に応じて適時見直します。

計画の基本理念

 「男女平等推進計画」は、日本国憲法と女子差別撤廃条約が掲げる人権の尊重と男女平等を旨とし、男女共同参画社会基本法がうたっている、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力を十分に発揮することができる男女共同参画社会の実現を目指し、次の5つの基本理念に基づいて、策定しました。

  1. すべての人の人権が尊重され、あらゆる場において性別による差別がない社会をめざす。 
  2. すべての人が自らの責任において、主体的な生き方を選択できる社会をめざす。 
  3. すべての人があらゆる領域の政策決定に平等に参画でき、ともに責任を担い合う社会をめざす。 
  4. 旧来の性別役割分業にとらわれず、すべての人が家族的責任を果たし、家庭生活と職業生活・地域活動等が両立できる社会をめざす。 
  5. 以上の理念が実現されて、すべての人が住みやすい平等のまち新宿区をめざす。

基本目標別の施策・事業

1 男女平等のための意識づくり

(1)男女平等へ向けた意識の形成
 男女平等を目指して法律や制度のうえでは整備が進められていますが、現実の社会では、いまだ多くの男女差別や固定的な性別役割分業が存在しています。また、買春をはじめとする性の商品化やセクシュアル・ハラスメント、女性への暴力など、女性の人権が侵害される実態が見られます。
 すべての人の人権が確立されるとともに、一人ひとりが固定的な性別役割分業意識から解き放たれた男女共同参画社会の実現を目指して、普及・啓発等の取り組みや相談事業を充実させ、男女平等意識の浸透を図ります。

    ア 男女平等推進のための普及・啓発及び調査・研究の充実
         1 男女平等に関する区民意識調査の実施(新規・継続)
         2 男女平等に関する国内外の情報提供(継続)
         3 男女平等を目指した講演会等の開催(継続)
         4 男女平等推進施策の研究(継続)
    イ 性に関する教育・啓発の推進
         5 男女平等に根ざした性の情報の提供(継続)
         6 幼少時からの性教育の推進(継続)
    ウ 女性問題に関する相談事業の充実
         7 女性問題に関する相談事業の充実(継続)
         8 相談機関相互の連携とネットワークの充実(継続)
    エ 男女共同参画都市宣言
         9 男女共同参画都市宣言と記念事業の実施(検討)

(2)家庭・地域・学校における男女平等教育・学習の推進
 家庭・地域・学校などのあらゆる場において男女平等教育や学習を進めていくことは、男女共同参画社会の土台をつくる重要な取組みです。
 だれもが性別にとらわれることなく、すべての領域でその能力と個性を発揮するために、性別役割分業意識を取り払う働きかけと生涯を通じての人権尊重教育を、息長く根気よく行っていきます。

    ア 家庭・地域における男女平等教育の推進
         10 保育士・幼稚園教諭の性差にとらわれない採用(継続)
         11 地域住民に対する研修・学習の機会と情報の提供(継続)
         12 保護者への学習機会や情報の提供(継続)
         13 保育士・幼稚園教諭への男女平等研修の充実(継続)
         14 父親の育児参加促進(継続)
    イ 学校教育における男女平等教育の推進
         15 男女平等の観点からの教育活動の編成(継続)
         16 男女混合名簿実施調査(継続)
         17 男女平等教育研修の充実(継続)
         18 女性教員活用の促進(継続)
         19 適切な進路指導の徹底(継続)
   ウ 生涯学習における男女平等教育の推進
         20 多様な学習方法や情報の提供(継続・検討)
         21 地域団体・学習団体への支援(継続)

2 男女平等のしくみづくり

(1)政策・方針決定過程への女性の参画の促進
 女性の社会参加は進んできましたが、政治の分野をはじめ教育機関や官公庁、企業における方針決定の場にかかわる女性はいまだ少数です。様々な政策・方針決定過程に女性も男性も平等に参画することができるしくみづくりを推進します。

    ア 区政への男女共同参画の促進
         22 審議会等における女性の積極的な登用(新規・継続)
         23 男女平等の視点での職員配置や職務分担の推進(継続)
         24 政策・方針決定過程への女性職員の参画の推進(継続)
    イ 人材の育成と人材バンクの整備
         25 女性人材リストの整備(継続)
         26 女性の人材育成の促進(継続)
         27 「しんじゅく女性団体会議」への支援(継続)

(2)地域における男女共同参画の促進
 豊かな地域社会を作るためには、女性と男性が生活者の視点を持ってともに地域に参画し、支え合い、地方自治の担い手として主体的にかかわっていくことが大切です。
 男性の参加を促すとともに、女性のリーダーを育成し、あらゆる人が地域社会をともに担うためのしくみづくりを進めます。

    ア 地域・団体活動への男女共同参画の推進
         28 「新宿区女性団体名簿」等の整備(継続)
         29 NPO等との連携と支援(継続・検討)
         30 男女共同参画に向けた地域団体等への働きかけ(検討)
    イ 女性リーダーの育成
         31 女性リーダー育成の促進(継続)
         32 実行委員会方式による各種催しの企画・運営(継続)

(3)男女平等を目指した社会制度・慣行の見直し
 現在の社会制度や慣行には、伝統的な性別役割分業の家庭像を前提としたものがあります。個人のライフスタイルや家族形態の多様な変化に対応するため、不平等をもたらしている様々な制度や慣行について見直し、それを変えていくための取組みを進めていきます。

    ア 社会保障制度や税制のあり方に関する国・都への働きかけ
         33 区民の意識・実態調査の実施(新規)
         34 社会保障制度や税制のあり方に関する国・都への要望(検討)
    イ 不平等慣行の点検・是正
         35 区のあらゆる施策への男女平等の視点の導入(継続)
         36 区の職場慣行の見直し(継続)
         37 不平等慣行の点検のための情報提供(検討)

(4)男女平等に関する条例の制定
 男女共同参画社会の実現のために、男女平等推進施策を区政に明確に位置づけ、体系的、総合的に進めていく必要があります。そのために、新宿区独自の条例の制定を検討します。

         38 男女平等推進条例の制定(検討)

3 雇用の場における男女平等の実現(女性の働く権利の保障)

(1)女性の働く権利を保障する職場の環境整備
 働くということは基本的人権であり、人間が自らの生活基盤をつくり、自立した生活を営むうえで欠かせないことです。また、急激な少子高齢化により、就業意欲のある高齢者や、女性の労働力なくしては、今後の日本経済を維持することは困難となりつつあります。国や都との連携のもとに、男女が均等な取扱いを受け、性別にとらわれず能力を発揮できる雇用環境の整備に向けた取組みを積極的に進めていきます。

    ア 働く女性の実態調査の実施とその活用
         39 働く女性の実態調査の実施(新規)
    イ 労働に関する情報提供と相談の充実
         40 労働に関する情報提供の充実(継続)
         41 労働に関する相談機能の充実(継続)

(2)働く女性への支援
 女性の就労形態は多様化し、パートタイム労働者、派遣労働者、契約・登録社員など、非正社員が増えています。女性の多様な働き方を支援するため、労働や起業に関する情報提供を行うとともに、パートタイム・派遣労働者などへの差別の是正、女性の起業支援を進めます。

    ア パート・派遣労働などへの差別是正及び多様な働き方への支援
         42 労働者、事業者等へのパートタイム労働法等の周知及び啓発(継続)
         43 女性の就職・再就職支援(継続)
         44 パートタイム労働条約及び同勧告の批准要望(検討)
    イ 女性の起業支援
         45 創業資金融資(継続)
         46 起業家のための経営相談・情報提供(継続)
         47 起業に関する講座の実施(検討)

4 男女の自立を保障する条件整備

(1)男女がともに家族的責任を果たすための条件整備
 男女がともに家庭責任を担い、職業と家事・育児や介護などとを両立できるようにすることは、男女共同参画社会の最も基本的な考え方の一つです。育児や介護などの家族的責任に関して、女性が主に担うことを前提とした従来の社会システムを見直し、女性も男性もともに育児・介護をバランスよく担いながら職業を継続していけるよう、地域・家庭での子育て支援、育児・介護休業制度の普及、介護サービスの充実、ひとり親家庭への支援充実を図ります。

    ア 地域・家庭における子育て支援
         48 子育て家庭の生活基盤の確保(継続)
         49 ファミリー・サポート・センター事業の推進(継続)
         50 児童館・学童クラブの運営(継続)
         51 子ども家庭支援センター事業の推進(継続)
         52 在宅子育て支援サービスの充実(継続)
         53 多様な保育サービスの充実(継続・検討)
         54 幼稚園の充実(継続)
         55 児童虐待やいじめの防止に向けた取組み(継続・検討)
         56 子どもに関する相談・講座の充実及び関係機関のネットワーク化(検討)
    イ 育児・介護休業制度の普及
         57 事業者や区民への育児・介護休業制度の普及・啓発(継続)
         58 育児・介護休業制度拡充等の要望(継続)
    ウ 介護サービスの充実
         59 施設サービスの整備(継続)
         60 在宅サービスの充実(継続)
         61 高齢者に関する相談体制の充実と情報提供(継続)
    エ ひとり親家庭に対する支援の充実
         62 ひとり親家庭に関する相談の充実(継続)
         63 父子家庭に対する支援(継続)
         64 ひとり親家庭の自立支援(継続)

(2)男女平等の視点に立った高齢者や障害者の自立と社会参加のための条件整備
 家庭での高齢者や障害者の介護の担い手のほとんどが女性であること、高齢期の経済的基盤が男性に比べ弱いなど、高齢者や障害者に関する問題は、より大きく女性に影響を及ぼしていると言えます。高齢者や障害者が住み慣れた地域で可能なかぎり自立した生活が送れるよう、男女平等の視点に立って、高齢者・障害者の自立や社会参加を支援するシステムづくりを進めます。

    ア 高齢者・障害者の自立に向けた支援
         65 高齢者の見守りシステム構築及び地域ボランティア活動の支援(継続)
         66 健康維持・介護予防のための事業の充実(継続)
         67 障害者の自立と地域生活の支援(新規・継続)
         68 住宅及び住環境のバリアフリー化(継続)
         69 高齢者・障害者の権利擁護(継続)
    イ 高齢者・障害者の社会参加の支援
         70 社会活動への参加促進(新規・継続)
         71 能力活用の促進・自立助長(継続)

5 女性の性と人権の尊重

(1)女性に対する暴力の根絶
 性犯罪、夫・パートナーからの暴力(ドメスティック・バイオレンス)、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為など、女性に対する暴力とともに、性の商品化が際立った地域を抱える新宿区では、売買春、性の商品化を女性への重大な人権侵害として、とらえていくことが必要です。女性に対する様々な暴力の根絶に向けて、社会全体の意識の向上を図るとともに、被害者の支援に取り組んでいきます。

    ア 女性に対する暴力の根絶に向けた取組みの推進
         72 女性の人権に関する意識の向上(継続)
         73 女性への暴力に関する相談体制の整備(継続)
         74 緊急一時保護事業の実施(継続)
         75 人権や性に関する教育の充実(継続)
         76 ドメスティック・バイオレンス防止法等の法的整備の要望(継続)
         77 ドメスティック・バイオレンスの再発防止対策(検討)
    イ セクシュアル・ハラスメント防止に向けた取組みの推進
         78 セクシュアル・ハラスメント防止体制の強化(継続)
         79 セクシュアル・ハラスメント防止のための啓発活動(継続)
    ウ 売買春・性の商品化に対する取組みの推進
         80 売買春や性の商品化についての意識変革の推進(継続)
         81 性にかかわる相談体制の整備(継続)
         82 NGOとの連携(継続)

(2)メディアにおける女性の人権尊重
 メディアは、従来の固定的観念の変化を促すことのできる一つの手段として、男女共同参画社会の実現に向けた大きな役割を担うことが期待されています。
 区が発信するメディアにおいて、常に人権を尊重し、固定的な性別役割分業にとらわれない男女の多様なあり方を伝える方法を工夫するとともに、メディアに対して正しい判断と意思表示ができることや、メディアを利用して情報交換し、情報を共有したりできる能力の育成を図っていきます。

    ア メディアにおける性差別の防止と性別役割にとらわれない表現の促進
         83 広報や情報誌等を通じた男女平等意識の啓発活動(継続)
         84 男女平等の視点からの広報、出版物等のガイドラインの策定(検討)
    イ メディア内容を読解・活用する能力(メディア・リテラシー)の育成
         85 メディア・リテラシーの普及・育成(継続)

(3)生涯を通じた女性の健康支援
 自分の体や性に関することを自分で決定する権利を持つという「性と生殖に関する健康と権利」(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の概念は、基本的な人権です。この概念が社会に根づくよう、普及・啓発に努めるとともに、ライフサイクルに応じて健康的生活を送れるよう、男女を問わず健康づくりへの支援を進めていきます。また、生活環境衛生の向上を図るため、食品の安全性に関する情報提供や快適な住環境づくりの相談に応じていくとともに、次世代への影響が懸念される化学物質にかかわる健康問題など、環境汚染対策に努めます。

    ア 性と生殖に関する健康と権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)の視点に立った普及・啓発の充実
         86 リプロダクティブ・ヘルス/ライツの概念の普及・啓発(継続)
    イ 健康づくりの支援
         87 地域での保健・医療サービス体制の整備(継続)
         88 食品の安全性や快適な住環境づくりの普及・啓発(継続)
         89 エイズ・性感染症の予防啓発(継続)
         90 総合的な周産期医療を含む母子保健医療の実施(継続)
         91 健康相談、健康診査、医療情報の提供(継続)
         92 環境汚染状況に関する情報の収集と提供(継続)

6 国際社会への対応

(1)国際理解・世界平和への意識の高揚
 男女平等社会の実現に向けた取組みは、国際的な動きです。女子差別撤廃条約をはじめ、世界会議における宣言・行動綱領などは、日本における男女平等の大きな推進力となっています。
 また、新宿区は平和宣言都市です。平和の問題は男女平等社会の実現にとって、最も大切な出発点です。講座の充実や友好都市交流、平和派遣などの中で、男女平等につながる意識を高めていきます。

         93 親と子の平和派遣(継続)
         94 区民の国際理解の促進(継続)

(2)外国人とともに生きるまちづくり
 新宿区は都内で最も多くの外国人が住むまちです。日本人と外国人が地域社会で互いの文化や習慣を理解し合い、ともに生きていくまちづくりは、今後もさらに重要となります。外国人が日常生活で困ることのないよう、外国語による生活情報の提供や外国人相談などを継続するとともに、日本人と在住外国人の相互理解を深めるための交流事業の充実を図ります。

    ア 外国人への支援と交流
         95 外国人相談窓口の運営(継続)
         96 外国人への情報提供(継続)
         97 在住外国人との文化交流(継続)
    イ NGO・NPOとの連携
         98 NPO等との連携(継続・検討)

7 計画推進体制の整備

(1)区民等の参加による推進体制の強化
 男女共同参画社会の実現に向けて、計画策定後においても、専門的意見や区民の声を積極的に取り入れていくためには、区の推進体制を整え、強化していく必要があります。そのため、男女平等推進会議を設置し、計画の実施状況の点検や見直しなどについて、定期的に提言を求めていきます。男女平等推進計画を見直す場合には、区民との意見交換会の開催や区政モニター等広聴活動の活用などにより、区民の意見を積極的に求めていきます。

    ア 男女平等推進会議の運営
         99 男女平等推進会議の運営(新規)
    イ 区民との意見交換
         100 区民との意見交換会の開催等(継続)

(2)庁内推進体制の整備
 男女平等に関する施策は多岐にわたっているため、庁内に連絡調整機能を持つ組織の整備をすることと、施策の計画的推進が不可欠です。そのため、女性関係行政推進連絡会議を充実し、施策を実施する職員一人ひとりの意識改革を図ります。また、区立女性情報センターの機能を整備し、IT(情報技術)を活用した施策の効果的な推進を進めます。

    ア 女性関係行政推進連絡会議の充実
         101 女性関係行政推進連絡会議の運営(継続)
         102 女性関係行政推進連絡会議小委員会の常設(継続)
    イ 男女平等に関する職員研修の充実
         103 男女平等研修の充実(継続)
    ウ 女性情報センターの機能の充実
         104 女性情報センターの機能の充実(継続)
         105 女性情報センターの名称変更(検討)
    エ 情報提供・相談体制の基盤整備
         106 ITを活用した情報提供・相談体制の基盤整備(新規)

(3)国・都への要望
 年金制度や税制の問題から、女性の緊急一時保護施設の設置、歌舞伎町の性風俗の問題に至るまで、男女共同参画社会の実現に向けては、区だけでは対応が困難な課題もあります。法制度にかかわるものや、対象・範囲の広いものなど、国や都において決定されるべき施策については、国・都に対し要望していきます。

         107 国・東京都に対する要望(継続)

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