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地域課題解決に向け、明確な“ビジョン”と“モラル”を持った「スマート自治体」を目指して

最終更新日:2019年12月13日

皆さんおはようございます。区長の吉住健一です。

はじめに、9月から10月に連続して関東に上陸した台風の警戒態勢に従事していただいた職員の皆さん、お疲れ様でした。改めてお礼を申し上げます。
10月の台風19号の対応では、10か所の地域センターに「自主避難所」を開設し、合計300人の方の受け入れを行いました。区内においては、河川の氾濫はなく、人的被害や建物の大きな損壊はありませんでしたが、今回の台風で、避難所における要配慮者への対応、要員態勢の規模や事務分担、住民への情報伝達など、新たな課題も見つかりました。
職員の皆さんには、平時から訓練を行い、災害時の自分の役割を認識してもらうとともに、今回、実際に従事した中で各々が感じた問題点や課題を顧みて、災害対応の改善につなげていただきたいと思います。
非常時における課題は、実際に経験して初めてわかることが多くあります。今回の経験を活かし、災害発生時に対応できるよう検証をお願いします。

さて、今年の区政を振り返ると、「働き方改革」の導入や、児童相談所の移管に向けた対応、公契約条例の施行、区施設におけるヘイトスピーチ防止のための利用制限基準の制定など、様々な課題への取り組みがありました。
それぞれの課においても、社会情勢や住民ニーズ等の変化に応じ、新たに開始した事業、方向転換を行った事業などがあったと思います。
区では、毎年、所属ごとに組織目標を設定し進捗管理を行ってもらっていますが、私も、年に2回、各部からの報告を受け、事業の進み具合や成果を確認しています。
事業を計画的、効率的に実施することは大切ですが、事業は実施することが最終目的ではなく、目標を達成するための手段であることに留意をしてください。事業の進捗管理において、その事業の成果についての検証や、より成果をあげるための事業手法の検討、状況変化に応じた目標そのものの見直しなどを、区の事業を担っている職員全員が意識することが必要です。
日頃から、事業成果の確認方法は適切か、事業手法が今のままで良いのかなどについて、職場の中で、あるいは、関係部署も巻き込んで大いに議論してください。
今日は、「スマート自治体」について少し話したいと思います。
近年、AIやRPAなどいわゆる破壊的技術を使いこなす「スマート自治体」が取り上げられています。
スマート自治体は、将来にわたり、質の高い住民サービスを持続的安定的に提供していくために、職員は企画立案や直接的なサービスなど、職員自らでなければできない業務に集中し、自動処理できるような作業はAIやロボティクスに処理させるという考え方です。
国の「自治体戦略 2040構想研究会」の報告書においても、団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年頃には、労働力の減少が社会問題化し、そうした中で、東京など大都市圏が直面する、高齢者の医療や介護、子育て支援、公共施設の老朽化、首都直下地震への対応といった、様々な課題に対応していくため、「スマート自治体」としてパラダイム転換することが必要であるとされています。
基礎自治体の責務は、住民に対し良質なサービスを安定的に供給することです。
今後、業務の効率化を進め、職員は人間でなければできない業務を行う体制づくりに取り組む中で、AI等の活用について研究や検討を行わなくてはなりません。
その際に、重要なことは、AI等への正確な理解・知識・倫理です。われわれ行政においては、何のためにAI等を活用するのかという明確な目的や、プライバシー保護及び信頼性の確保など個人の尊厳にかかる規範意識を持つことが必要です。
明治から大正にかけて活躍した実業家で、日本の資本主義の父と言われる渋沢栄一は、「実験論語処世談」の中で、「本来、精神的文明と物質的文明とは並行して進むべきものにもかかわらず、物質的文明のみが長足(ちょうそく)の進歩を遂げ、精神的文明が之に伴わなかった結果、精神的文明が物質的文明に逆比例して退化してしまった」と当時の国際道徳について述べています。
国際社会において様々な分野の技術が急速に進歩する中、AIに人が使われるのではなく、人がAIを道具として使いこなし、様々な地域課題を解決につなげていけるような“ビジョン”や“ モラル”を持った「スマート自治体」の在り方を考えていきたいと思っています。

話は変わり、来年はいよいよ東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の本番となります。
大会期間中は、言葉や文化が異なる多くの国の人が新宿を訪れます。また、パラリンピック大会を通じて、障害者スポーツを知り・触れる機会となります。
区では、大会に向けて、主要道路及び駅周辺の公衆トイレの多機能化・洋式化や、視覚障害者用の誘導標示の整備、歩行者用観光案内標識の設置などに取り組んできました。令和2年4月には「新宿区ユニバーサルデザインまちづくり条例」を施行し、区内に建物を建てる際に、エレベーターや多機能トイレ、ピクトグラムなどがより利用しやすくなるよう区と事前に協議を行う制度を導入します。
さらに、現在、区立学校の児童・生徒には、様々な人と接する機会を持ち、違いを認めあい、多様性と個性を尊重する心を育んでもらうため、障害者スポーツの体験や、海外の観光客への英語を使ったおもてなしボランティア、町会・自治会など地域の方と連携したオリパライベントの企画・運営に取り組んでもらっています。
東京2020大会を契機として進めてきた、「年齢や性別、個人の能力にかかわらず、誰にも優しいまちづくり」を、大会終了後も様々な分野で推進し、新宿が、ハード・ソフトの両面で、「ユニバーサルのまち」としての地位を築いていけるよう、皆で取り組んでいきましょう。
最後に、今年も残り二週間余りとなりました。
職員の皆さんの、この一年のご努力に心から感謝いたします。
多忙な時期ですが、体調管理に気をつけて、身体を労わってください。そして、年末年始の期間にしっかりと休養をとって英気を養ってください。
本日の放送はこれで終わります。

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