夏目漱石記念施設寄附趣意書

最終更新日:2019年10月11日

 夏目漱石は、慶応三年(1867)1月5日(新暦では2月9日)、江戸・牛込馬場下横町(現・新宿区喜久井町)に生まれました。帝国大学を卒業し、松山・熊本での教員生活、ロンドンへの留学の後、千駄木・西片(現・文京区)時代を経て、明治40年(1907)、牛込区早稲田南町(現・新宿区)に転居し、『三四郎』『それから』『門』『こゝろ』など数々の名作を世に送り出しました。この家は「漱石山房」と呼ばれ、漱石を慕う多くの弟子たちが訪れ、「木曜会」と呼ばれる文学サロンも開催されました。そして、大正5年(1916)12月9日、漱石は49年の生涯を閉じました。新宿区では、この「夏目漱石終焉の地」を近代文学史上重要な場所として、区の「史跡」に指定しています。  

 夏目漱石が、日本の近代作家の中でひときわ大きな存在であることは、誰もが認めるところです。多くの作品が、時代を超えて読者の心を捉え、生きる道標になるとともに、幅広い世代に愛読されている国民的作家です。また、近代日本に向き合った偉大な知識人でもありました。今から約100年前、漱石が小説の中で描いた「近代日本」、「資本主義・帝国主義」と「個人や自我」というテーマは、現代社会を生きる私たちの心にも強くそして静かに響いてきます。

 かつて「漱石山房」があったこの地は、多くの漱石愛好者にとって、漱石の暮らしや創作の息づかいを感じることのできる象徴的な場所です。新宿区は、この地に漱石生誕150周年にあたる平成29年(2017)9月24日、漱石初の本格的記念館である「新宿区立漱石山房記念館」を開館しました。記念館では、土地の記憶に結びつく「漱石山房」を一部再現するとともに、通常展や特別展、講演会の開催、ブックカフェの運営など活気ある事業活動を行っています。そして、多くの人々に何度も訪れていただける記念館を目指しています。本記念館の運営によって、文豪・夏目漱石の未来への継承、国内外への漱石文学の発信、さらにはわが国の文化の発展に貢献するため、総力をあげて取り組んでまいります。

 全国の漱石を愛する皆様、社会各層でご活躍の皆様、また文化芸術の振興に理解の深い企業・団体の皆様の本事業への参画を得て進めたいと考え創設した「夏目漱石記念施設整備基金」は、資料の収集、資料の修復等に活用させていただきます。 つきましては、新宿区立漱石山房記念館の基金設置の趣旨にご賛同をいただき、基金へのご寄附を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

 令和元年9月
                               
                             新 宿 区 長   吉 住 健 一

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