国史跡指定をうける外濠とその周辺地域は、都市のさまざまな課題を柔軟に受け止め、時代の変遷とともに変貌してきましたが、江戸時代から継承され歴史的資源である濠や見附城門跡に、橋や鉄道、公園などの近代以降の要素が加わり、重層的な都市景観を形成しています。同時に、大都市の貴重な水辺空間であり、その豊富なみどりは外堀通りや周辺の斜面地のみどりと一体となって潤いのある景観を形成しています。そして、外濠公園や隣接する台地上からは、開放感のある良好な眺望が得られるほか、1日に100万人が利用するといわれる鉄道の車窓からは、変化に富んだ地形と歴史遺産をダイナミックに体感することができます。 近年、外濠周辺では、超高層ビルの建設により景観に与える影響が行政境を越えて生じているなど、外濠に隣接する千代田区、港区、新宿区の3区が連携して取り組むことが必要となってきました。平成21年3月、3区は「史跡江戸城外堀跡保存管理計画書」に示された史跡の保全・整備の方針を受けて、「外濠地区景観ガイドプラン」を策定し、景観誘導範囲や3区が共有する将来の景観像、景観形成の方向性等を定めました。これを踏まえて、以下に示す方針に基づき景観の形成を推進します。 外濠の広大な空間、外濠公園や台地上、橋や道路等から眺める水とみどりに包まれたまちなみ、変化に富んだ地形とまちなみを一望できる鉄道車窓からのシークエンス景観*(見る人が移動することで変化する眺め)などを、新宿区を代表する美しい都市景観として守り育てていきます。 今後の外濠の整備や活用と連動して史跡の風致の保全が図れるよう、周辺の建築物等を適切に誘導し、歴史あるおもむきや水とみどりに調和した景観形成を推進していきます。 外堀通り沿い、橋、外濠公園、遊歩道、斜面地の坂道等では、歩く人が、外濠の水辺と広がるみどりの連続性を感じることができる潤いの空間を創出します。特に、神楽坂と四谷の賑わいをつなぐ外堀通り沿いには、外濠の「まちの記憶」を活かした落ち着きのある賑わいを感じられる「歩きたくなる空間」を創出していきます。 外濠に隣接する斜面地やその西側の台地では、地形の特性を活かしながら、みどり豊かで落ち着いたまちなみを保全し、良好な住宅地の景観をさらに向上させます。 変化に富んだ地形、連続する水とみどりなど外濠の景観特性に応じた屋外広告物のデザイン誘導を進め、新宿区を代表する美しい都市景観を形成していきます。また、眺望景観*の保全を目的に、東京都屋外広告物条例*の制度と連携し、屋外広告物の景観誘導を進めます。 〈景観法第8条第3項の規定に基づく良好な景観の形成に関する方針とする〉 新宿区景観まちづくり計画 新宿区景観まちづくり計画 | 第2章 景観法を活用した景観まちづくり(3歴史あるおもむき外濠地区) (2)景観形成方針①外濠でしか得られない特徴ある眺めを美しい都市景観として守り育てる②外濠の整備と併せた周辺建築物等の景観誘導*③「外濠の記憶」を活かしたみどり豊かな水辺の歩きたくなる空間を創出する④住宅地のみどり豊かで落ち着いた景観を保全・創出する⑤歴史あるおもむきや水とみどりの空間における屋外広告物の景観誘導
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