議事要旨

日時:平成18年7月12日(水)18:30~20:30
場所:新宿文化センター 小ホール

報告 『平成17年度・地域活性化バス導入検討調査について』 

    当日資料

講演 『地域が創り・支える公共交通について~神戸市・住吉台くるくるバスの事例を参考に~』 議事要旨

森栗茂一氏(大阪外国語大学教授)

[1]くるくるバス導入の経緯
  • 住吉台は、市バス停からは315段の階段を登らなければならない立地条件。
  • 住民がバス開通を何度も神戸市に陳情したが、道が狭いこともあり受け入れられなかった。
  • 平成15年に全国都市再生モデル調査に採択され、有料でバスの走行実験を行った。実験期間中、住民は積極的にバスに乗車した。
  • 実験後、バス導入について話し合うため、地元の世話人や自治会、まちづくり協議会などが参加する「東灘交通市民会議」を結成した。国の機関や国道事務所・区役所・建設局・交通局も活動を支えてくれた。
  • 神戸市は資金を出してはいないものの、市の担当者は、住民だけでは交渉しにくい土木事務所等への折衝などを行ってくれた。
  • 市バスは、当初バス停の使用に難色を示したが、市民合意のバスであるということに理解を示し、使用を許可した。
  • コースやバス停位置の決定時には、自宅前にバス停は置かせないと主張する人もおり、トラブルになった。

[2]バス導入後の状況
  • 需要は当初500人/日と想定したが、実際は1000人以上乗車する日もある。新型車両投入、ダイヤ改正の動きがある。
  • バスができてから、バスの中で会話が生じるようになった。
  • 駐車スペースが無いため、車では行きづらかった団地に住む高齢者のところに、子や孫がバスで訪問できるようになり、ますます乗客が増えた。
[3]今後のバスの考え方
  • 運行経費は役所が出すと存続等が難しくなるが、住民が積極的に運賃を支払って乗るなら継続できる。
  • 5~10年後には認知症ドライバー数も増加し、交通事故などが増えると思われる。 障害者・高齢者が安心して移動できるためにも、地域にバスが必要。
  • 公共交通を誘導する場合でも、市民合意をつくれば地域交通は便利になり、車依存を軽減できる。バスの最大の敵は、自家用車に頼る我々の生き方である。
  • みんなで議論する場をつくる“コーディネーター”の育成教育は大きな課題である。
  • 大切なことは、住民がどこまで自覚して自分たちの地域について責任を持って、議論することができるかということだ。

パネルディスカッション 『新宿区における地域交通の課題と将来の方向性』 議事要旨

コーディネーター:
秋山哲男氏(首都大学東京教授)

パネラー:
森栗茂一氏(大阪外国語大学教授)
鈴木文彦氏(交通ジャーナリスト)
立川吉彦氏(東京商工会議所会員)
岡野誠氏(東京都交通局自動車部計画課長)
武田勉氏(ケイビーバス株式会社運輸部長)
藤牧功太郎(新宿区都市計画部都市計画課長)

秋山哲男氏(首都大学東京教授)

  • 今回のシンポジウムでは、以下の3点を念頭に議論を行いたい。
    [1]外出困難者の問題
    [2]環境面の問題:車を毎日乗る人が週1回やめれば、14.2%のCO2が削減できる。
    [3]運営面の問題:コミュニティバスは運行している場所の半数以上が赤字。地域にはそれぞれ特性があることが認識されていないため、マーケティングが全くうまくいっていない。

パネラーとバスとの関わりや地域を巡るバスのあり方について

立川吉彦氏(東京商工会議所会員)
  • 大江戸線は便利だが、そのために新宿通りに新宿駅や地域の出張所へ行くバスがなくなり不便が生じた。
  • 商工会議所より、地域の観光も考慮したバスを1日借りる話を聞き、長寿会・商店会・町会、ことぶき館に声をかけて、バスの実験運行に関わることになった。
鈴木文彦氏(交通ジャーナリスト)
  • 最近は、コミュニティバス・公共交通が成り立たない地域交通、高速バス路線など、各地の交通を検討に係ることが多い。
  • それぞれの地域には事情があるため、コミュニティバスはその地域の本当のニーズ・あり様に合わせた作り方をしなければ成立しない。
  • 新宿駅に集まってくる交通機関は、広域中心の体系であるため、必ずしも域内のモビリティは十分でない。
  • 区は人が実際にどのように動きたいのか、住民と議論していく必要がある。
森栗茂一氏(大阪外国語大学教授)
  • バスに税金を一切入れるなとは言わないが、税金を前提にすると存続はできない。
  • 自分たちが立ち上げるという前提で仲間をたくさん集め、その結果として税金を使わないことができる。
秋山哲男氏(首都大学東京教授)
  • 今までの交通計画は幹線的な計画が中心であったため、地区計画の調査データやセンスが生きなかった。バスを含めた地区の交通計画と、コミバス計画間の議論が不足している。
  • バスは体育館やコミュニティ施設などの公共財とどう違うのかという議論がある。欧米では普通に出しているバス補助を、他のコミュニティ施設と同様になぜ出せないのか。
  • 運行費用に税を前提としないこと。税を安定的に供給するとそれだけ努力をしなくなる。
  • 人々のモビリティに対して行政がしっかり計画を立て、必要なお金については地域の市民にも協力を得る姿勢が必要であり、これは市民のみではできない。
  • コミバスは障害者・高齢者には恩恵が薄く、地域モビリティの適正配分に課題が残る。

新宿区の交通の現状について(都バス、ケイビーバス、区)

岡野誠氏(東京都交通局自動車部計画課長)
  • 都バスは区部134・多摩地域4路線、計138路線を運行している。
  • 新宿区内は20路線あるが、そのうちの7割は赤字である。
  • 地下鉄の拡充のため、現在の乗客数は57万人/日で、平成3年の92万人/日をピークに、15年で2/3以下になった。
  • 規制緩和で、多種多様なバスができるようになった。コミバスも各地で参入するようになり、事業者間の競争になっている。
  • バスロケやパソコン・携帯へのバス接近表示など、利便性を高める努力を行っている。
  • 今年度末には、所有車両のうち約1,000台がノンステップバスとなる予定。また、低公害車も今後も導入していく予定である。
武田勉氏(ケイビーバス株式会社運輸部長)
  • 百人町線は02年3月から運行しており、高田馬場~社会保険中央病院~新宿消防署~東中野駅を往復している。乗車賃は200円均一。
  • 新宿区都市計画課と補助も含めて話し合っているが、1便当たり10名前後の乗車数で、運行当初から赤字。
  • 05年11月に04年度の収支を見て、運行回数を2/3に減らし30分間隔にした。
  • 住民からの要望は以下3点あるが、経費等を考慮してできないと回答。
    [1]高田馬場からの終車延長
    [2]東中野駅南への経路延伸
    [3]高田馬場・諏訪町交差点方面への延伸
  • 百人町線を新宿区と作り育てているという現状だが、地域住民とのコミュニケーションが足りていないと感じる。
  • 新宿区に補助を入れるよう要請してきたが、区長は税金を入れないと言う。今後は区及び地域の住民と一緒に、補助を使わない運営方法等も含めて考えていきたい。
藤牧功太郎(新宿区都市計画部都市計画課長) 
  • 都市計画課は、安全・快適な移動、道路・鉄道整備、バリアフリー、交通事業者・地元との調整、地域活性化バスなど、区内の交通に関する計画・調整を行っている。
  • 新宿区内の鉄道は6事業者12路線・46駅、路線バスは7事業者45路線ある。
  • 幹線系の公共交通が中心であるため、コミュニティバスの役割は地域内にあると考える。
  • コミュニティバスの役割は、以下3点。
    [1]バリアフリー:高齢者・障害者の移動支援
    [2]地球環境問題:車依存の抑制
    [3]地域活性化:商業・観光・文化資源を発信・振興
  • 地域を巡るバスについては、バス導入意向のある地区において、地元住民や有識者をメンバーとした勉強会を開催し、検討していきたい。今年度は、既に地元主体で1日試験運行を実施した四谷地区から勉強会を発足したいと考えている。

地域を巡るバスの課題や今後の取り組み方について

立川吉彦氏(東京商工会議所会員)
  • 区内の路線は、地域交通レベルではまだ足りない部分があり、駅へのアクセスなども課題。既存のバスもより工夫できるのではないかと思う。
鈴木文彦氏(交通ジャーナリスト)
  • まちづくりの関連で、コミバスがどんな意味・役割を果たすのか、よく議論して計画すべきである。
  • 新宿駅周辺循環バスは、計画段階で警察と考え方について意見交換しながら、交通規制等と絡めて考えていくことで、定時運行の道筋が見えるかもしれない。
  • 思い込み・前提を廃して考える必要がある。運行形態についても、DRT・乗合タクシー・福祉輸送STSなどバス以外のメニューにも、視野を広げるべき。
  • バスはバス会社が走らせるものだと誰も疑問に思わない。廃止することになっても、行政が対応するだろうという考え方がまだ圧倒的に多い。
  • その地域の移動について、みんなで取り組むことが、地域に持続する交通をもたらす。
森栗茂一氏(大阪外国語大学教授)
  • 既存のバス事業者、特に公営交通は、コスト的・サービス的に身動きできない状況にある。
  • 運行間隔があきすぎると誰もならない。神戸では始めから15分ピッチで走らせた。
  • 車に頼らない生活は、地球環境への配慮のみでなく自分の健康にも貢献する。
  • 公共交通における人々の触れ合い、つまりは「顔なじみ」になることが、地域の防犯につながる。
  • 高齢者が集団で運転免許証を返上し、代替交通を検討するという方法もこれからの社会では有効である。
秋山哲男氏(首都大学東京教授)
  • 路線を増やせない・サービス水準を下げざるを得ないとの話があったが、逆にサービスレベルを上げれば利用者が増え、収入が増える場合もある。
  • コミュニティバスは路線バスの延長であり、導入時にバス全体のネットワークを調整すること。まず既存の路線バスの見直しができないかということから検討すべき。
  • バスが事業収益だけでは成立不可能なとき、事業者だけでは解決困難である。このときどのような支援が考えられるかも検討しなければならない。千代田区内では、企業からの協賛金で無料バスを走らせている例もある。
  • バリアフリーの観点から、バスだけでなくDRTやSTSなども含めた検討をすべき。
  • 環境問題への対応も重要だが、自動車に頼らない交通は現時点では難しい。
  • 昼間のバスは乗客が少ないので、代わりにタクシーを回す「バクシー」や、スウェーデンにはタクシーとDRTの間の「デキシー」があるなど、バスのイメージは多様にある。
  • 公共交通事業の身動きが取れなくなっており、これを社会的に変える時期に来ている。
  • バスは規制緩和しても変わらない。必要最小限の部分は行政が負担し、路線を維持する時代になるだろう。
  • 町田には、収益のある路線とそうでない路線を一括でバス会社に委託しているところがある。
  • 運行間隔は30分では全くダメで、最低でも20分ラインは死守すべきと考える。

新宿区への提言

最後に画用紙に新宿区への提言(キーワード)を書いていただきました
パネラーが提示したキーワード及びコメント一覧(発表順)
キーワード パネラー コメント
四谷に走らせたい 立川氏 実現に向けての思いが強くなった
みんなが当事者 鈴木氏 事業者・行政・住民・利用者が、当事者になって取り組む必要がある
盛り場(モリバ)/事業者・交通事業者・市民・役人 森栗氏 市民や行政、交通事業者が、地域をどうするかについて、一緒に盛り上がる“場”が必要
育む 岡野氏 地域のバスを運行・継続していくには、地域全体でバスを育てていくことが重要
傾聴 武田氏 区は事業者・利用者・先生・コンサルのみでなく、広く様々な意見を聞いて欲しい
協働 藤牧氏 行政・事業者・地域住民が共に議論し、バスのあり方を考えるのが重要
両輪-ルート型・デマンド型 秋山氏  コミュニティバスのみでなく、多様な交通手段を使い尽くそうということ

秋山哲男氏(首都大学東京教授)

  • 本日の結論は、キーワードをまとめると『四谷を対象地域にして、協働で、みんなの意見をたくさん集めて、盛り上げていこう。』ということ。
-以上-

用語の定義

  • コミュニティバス…中心市街地と周辺住宅地等を小型バス等により運行し、運行ダイヤ、運賃、停留所間隔等の設定が主に通勤・通学以外の日中のバス利用の促進を図る内容のバス運行システムのこと。
  • STS とはSpecial Transport Serviceスペシャル・トランスポート・サービスの略。 既存の交通機関(鉄道・バス等)を利用できない高齢者・障がい者等を対象に送迎サービス等を行う交通システムのこと。
  • DRT とはDemand Responsive Transportの略。 利用者が外出したい時間に事前予約し、乗り合い型で目的地やその周辺の停車場所に送迎する公共交通システムのこと。タクシーほど運賃が高くなく、バスより自由度があるとされる。

本ページに関するお問い合わせ

新宿区 みどり土木部-交通対策課
TEL 5273-4265
FAX 3209-5595

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